ドライイーストや市販の天然酵母で美味しいパンが焼けるのに、わざわざ不安定で苛立つ自家製天然酵母でパンを焼くメリットが見出せず、どちらかというと自家製天然酵母パンづくりには後ろ向きだった私でした。が、昨今のドライイースト不足がきっかけで、自家製天然酵母の世界に足を踏み入れておりました。最近は、手がかかる出来の悪いコを丁寧に育てて出世させているような、擬似子育てゲームを楽しんでいるような感覚もあります。既に巷にはドライイーストが出回っているというのいに、いまだに酵母ちゃんを育てている私でございます。
知ってしまった苺酵母の魅力
5月ともなると果物売り場は苺盛りでして、例年ですと苺ジャム祭りな我が家ですが、今年は苺酵母祭りでございます。気候もよろしく、酵母ちゃんもブックブク酵母増殖してくれました。苺酵母の魅力は、なんと言ってもこの香りでしょうか。酵母液が染まる過程もとても美しいです。
出来上がったパンも淡いピンク色…となってもらいたいところですが、元種を仕込む時点で妙な灰色になってしまいます。出来上がるパンも若干グレーがかっているのが少々残念ですが、まぁ、そんなに気にするほどのグレー感ではありません。
元種仕込みのパンには、酵母液自体のthe strawberry!ってほどの香りは残りませんが、クラムには苺酵母独特のフルーティーな甘い発酵薫がございまして、これがなんとも香り高く、これはドライイーストには変えがたい個性的な味わいです。
苺酵母パンに苺ジャム
トーストがのっているお皿は、一番お気に入りのスタジオエムのお皿です。我が家は結構スタジオエム率が高いです。
ドライイーストは人工的なもの?
天然酵母に対する人工的なものとして”ドライイースト”?って勘違いされていることがありますが、ドライイーストの酵母は、自然界の野生酵母の中から選ばれたパン作りに適した酵母が効率良く増殖され、さらに乾燥させて安定供給できるようになったものです。人工的に培養、乾燥こそさせてはおりますが、決してケミカルな物質ではありませんで、これも広義の天然酵母ですね、と私的には思っております。ドライイーストはいわば選ばれし優秀な酵母集団ですから、誰でも簡単に安定した仕上がりのパンが作れる素晴らしき文明の利器なのです。
ドライイーストと自家製天然酵母はどちらが良いのか?
自家製天然酵母には空気中の雑多な菌が混じり合うので、酵母以外が同じ条件でもその時起こした酵母によって、ゆらぎのある仕上がりとなります。そこには「酵母由来の独特で複雑な個性が愉しめる」といったメリットがあります。もっとも、不安定だけにうまくいかない時があったり、出来上がりに時間がかかってしまったりと、特に慣れないうちは焦ってしまい、個性を愉しむどころか苛立ってしまうことがあるというデメリットもあります。以前の私はデメリットが優先してしまってパン作りが楽しめなくなり、あっさり断念しました。
ところ最近は手のかかる3人の子供のおかげで忍耐力が養われたのか、酵母の個性を受け入れる精神的な余裕が出来たようで、いちいち面倒なヤツだなと思いつつも、時間をかけて仕上げた個性的な味わいを愉しんでいる最近の私でございます。
とはいえ、やはりドライイーストは、ずぼらな私にも美味しいパンを手軽に作れる快感と楽しみを与えてくれます。どちらが良いとか優れているとか、優劣つける物ではなく、どちらも変え難き存在。ですから、そこは上手く使い分けて今後もゆるーく、パンライフを楽しんでいければなと思っています。